ニッポンのモノ作りが顕在する「南シャツ」
南祐太さんが「なにかモノ作りに携わりたい」と門を叩いたのは、百貨店のオーダーシャツを手がける地元の工場。そこでシャツ作りを一から学ぶと、腕の良さが開花。独立し有名な国産高級シャツの仕立てを請負う腕を持つシャツ職人がここに誕生したのである。やがて自身の名を冠したオリジナルシャツをローンチし、自宅兼工房で受注を開始するとクラシックに一家言持つ人たちの間で「南シャツは凄い」と評判がたつように。ほぼ同時に、SNSでも拡散していったという。それまでメディアも南シャツの存在に気が付いていなかった。独立からわずか5年ほどで、有名百貨店がコーナーを用意して注文を受け付けるまでの名門シャツに成長を遂げた。
お客様の希望をすべて叶えるシャツを仕立てる
南シャツのハウススタイルは? と問うと、「ハウススタイルが無いのがハウススタイルです」という。お客様の希望をすべて叶えるシャツを仕立てるという南さんのスタンスを表す、頼もしい答えでもある。「カッタウェイカラーのフレンチフロント、カフスはターンナップしてヨークはギャザーを入れて」といった上級者の要望から、「毎日の仕事に使いやすいワイシャツを」というシンプルな希望まで、120%で叶えてくれる。
PRESIDENT STYLE プロデューサー・水谷も愛用中
趣味で武術を嗜む水谷は、筋肉質の体格に合う既製品シャツが見つからないという悩みから、シャツはオーダーを常用。南シャツには、そんな体格を包み込んだうえで「仕事着としての品格を備えながら、動きやすいシャツを」とオーダーした。生地は細ピッチのブルーストライプ。タイドアップすれば、きりりと引き締まった印象がありつつも、ノータイならデニムにも合わせられるスマートカジュアルなシャツが仕上がった。
襟元をシャープにみせる角度へのこだわり
左右襟羽根の合わせ部分は、襟の取り付け方からボタンホールを開ける位置まで、できるだけ隙間が開かないようギリギリのポイントを攻めて作り込まれている。タイドアップしたときに首元が締まってみえるように最善を尽くしているのだ。また襟羽根の折り返しは、ゆるやかにカーブするようにクセつけられている。シャツの上品な高級感が感じられる要所である。
可動域をとるためのギャザー仕様
細身にフィットさせながらも、肩まわりや腕の可動域をとるため、各パーツの縫製部は少し余裕をもたせながら生地を縫い込んでいる。このとき縫い込む分量が多い側に「ギャザー(生地余りをシワ寄せした部分)」が出る。このギャザーがあることで平面の布が立体化するのだ。水谷は肩まわりに厚みがあるため、後ろ身頃を肩に縫い合わせる部分にギャザーを寄せ、背中の可動域を確保。スマートに見えるが、腕・肩を大きく動かしてもツレたりせず、着心地は快適なものとなっている。
南シャツのオーダーは日本橋のアトリエで
千葉県流山市にある自宅兼工房で受け付けている南シャツのビスポークは、現在、伊勢丹新宿店メンズ館と、日本橋のアトリエでもオーダーできる。伊勢丹新宿店メンズ館では1階オーダーワイシャツコーナーにて常設。日本橋のアトリエはWebサイトか電話で予約すれば、南さん本人が採寸してくれる。また、年に数回は大手百貨店や地方の有名セレクトショップなどでトランクショーも開催。情報は南シャツのHPまたはSNSで発信されているので、チェックしておきたい。
text:Yasuyuki Ikeda(04)
photograph:Tatsuya Ozawa(Studio MUG)