蒸し暑くなってくると、汗をかくことからは逃れられない。当然ながら汗で濡れたシャツから塩分や脂分を含んだ汗がジャケットの内側に触れれば、汚れや黄ばみなど悪影響は生じるのだが、これは夏場に限らず冬場でも同じことだ。染みこんだ汗は、シーズン後にまとめてウォータークリーニングが望ましいが、よほど汗がびっしょり染みこまなければ神経質になる必要はない。ただし汗ジミやニオイを防ぐため、一日着たジャケットは陰干しして完全に乾燥させることを心がけたい。

パンツは裾をクリップで留めて、逆さに掛ける。こうすることでウエスト側の重みで足筒のシワが伸び、フロントのヒゲや腰まわりや膝裏の座りジワが解消する

その際のポイントとして、ジャケットは肩のあるハンガーに掛けること。パンツはパンツハンガーに裾をクリップして逆さに吊るす。こうすることで、スーツは本来の立体感を取り戻すのだ。上質な素材を使ったスーツなら、アイロンやスチームも不要で着ジワが伸びる。

洋服用のブラシはスーツを着る人にとってマストアイテム。一日、陰干しして乾燥したスーツは、手首を使って埃や塵を掻きだすように、上から下へとブラッシングしてからクローゼットへ

合わせてブラッシングも不可欠だ。ホコリやフケなど目に見えない細かな塵は、生地目に入り込み、積もり積もれば様々なダメージをスーツに及ぼす。そのうえスーツを着用すると生地目がねじれたり撚れたり、シワになったり毛羽立ったりしているもの。これを放って置くと、やがてシワがとれなくなったり、肘や膝がでてきたり、スーツのフォルムが崩れてきてしまう。

これを防ぐためには、ブラシで埃を取り、生地目を整えてやる必要がある。ブラシはエチケットブラシのような簡易なものではなく、獣毛を使った洋服ブラシを用意。上から下へ、手首のスナップを利かせて弾くようにブラッシングするのがコツだ。上から下へ横滑りさせるようにブラシをかけてはいけない。生地の毛羽が立つと風合いが変わってしまうからだ。

スーツを始め、あらゆる服のお直しを手がけるサルト銀座店のモト・クォックさん。香港留学の経験があり、アジアのクラシック事情にも詳しい

今回のブラッシングについて指南してくれたのは、サルト銀座店のモト・クォックさん。モトさんによれば、連日着用を避けることと、毎日のブラッシングによって、スーツの寿命は格段に伸びるのだそうだ。そしてもう一つ、とっておきのスーツケアを教えてくれた。

「当店では、スーツに、ナノテクノロジーでコーティングするサービスを行っています。目に見えないコーティングによって、撥水、撥油、防汚など、さまざまな機能をスーツや靴に付加することができます。どんなアイテムにも可能な技術ですので、一度お気軽にご相談ください」

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text:Tsuyoshi Hasegawa(04)
photograph:Tatsuya Ozawa(Studio MUG)