BMW史上初の試みとは

390kW(570馬力)の最高出力と750Nmの最大トルクを発生する4395ccV8エンジンに4WDシステムの組合せ

BMWは、ただし、マーケティング的にひとつおもしろい試みを実行した。「レーストラックからストリートへ」なるコンセプトを採用したのだ。

市販車の前にレースカー「M8 GTE」を作り、2018年初頭から主要な耐久レースで走らせてきたのだ。1月に米国で行われたデイトナ24時間レースが皮切りだった。

5月のベルギーでのスパ・フランコルシャン6時間レース、そして6月16日から17日にかけてのル・マン24時間レースと続いた。

このあとも世界耐久選手権のプログラムに従い、2019年のル・マンでしめくくりになる「スーパーシーズン」をずっと走るそうだ。

右はデザイン統括のアドリアン・ファン・ホイドンク氏、左から二人目は開発担当取締役のクラウス・フレーリッヒ氏

通常クルマは市販車が出てからレースカーが作られる。このミュンヘンのメーカーはその反対をいったことになる。「BMW史上初の試み」と発表会場で、同社の開発担当取締役のクラウス・フレーリッヒ氏は語った。

ル・マン24時間レースで勝利するには――。トヨタ社内にあってレース活動を担当するトヨタ・ガズーレーシングは、「速いだけではだめ、ずっと走れないと勝てない」と言っていた。

左はル・マン24時間レースを走ったM8 GTE

ファクトリーチームでエントリーしたM8 GTE。2台のうち1台はクラッシュでリタイヤとなったが、もう1台は完走。

ポルシェ911RSRやフェラーリ488GTEといった強敵と渡り合う姿は、いかにすぐれたスポーツカーであるかの、またとない証明である。

とりわけ昨今はどのスポーツカーメーカーもレースに熱心だし、顧客も購買にあたってはレースの成績を気にすることも多い。その意味でも新型8シリーズは存在感を示していた。

市場でのライバルは、静止から時速100キロまでの加速性能などからすると、ポルシェ911カレラ4あたり、とマーケティングの担当者は教えてくれた。

ドイツ本国での販売開始は2018年11月と言われているので、日本に入ってくるのはその後となるだろう。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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