高級時計に搭載される複雑機構はいろいろ。その中でも最も製作が難しいといわれる機構が、時刻を音で知らせる仕組みだ。そんな“鳴り物系”腕時計の分野で、いま特に注目されているのが、オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ」(以下、スーパーソヌリ)である。

そもそも「ソヌリ」とはフランス語で“時鐘”を意味し、正時、クオーター(15分)に自動的に音を鳴らして時刻を告げるストライキング機構のこと。このソヌリと組み合わされることが多い「ミニッツリピーター」は、レバーやプッシュボタンを操作すると分(ミニッツ)まで音で告げる機構で、異なる2つの音色の組み合わせで時/15分/分を区別して時刻を告知する、複雑時計の“華”である。

オーデマ ピゲは1875年の創業当初からミニッツリピーター付き懐中時計を製作しており、1892年には早くも腕時計版をつくっている。ミニッツリピーターの機構を作る高い技術は、オーデマ ピゲにとっていわば自家薬籠中のものだ。

昨年発表のスーパーソヌリは単に音を鳴らすだけでなく、「音質そのものがコンセプト」だという。時計というよりアコースティックの楽器開発に近い、音響工学的なアプローチを採用し、音のクオリティーに徹底してこだわった。スーパーソヌリのすごさはどこにあるのか? オーデマ ピゲの複雑時計開発を担うジュリオ・パピ氏らに話を聞いた。

今回取材に応じたクローディオ・カヴァリエール氏(左)とジュリオ・パピ氏。オーデマ ピゲ ブティック銀座店内で。