エレガンスの解釈――カルティエ Cartier

「ドライブ ドゥ カルティエ」。2010年に開発されたカルティエの自社製キャリバーCal.1904MC。このモデルにはスモールセコンド、日付表示付きの発展型Cal.1904-PS MCを搭載。ムーブメントもエステティクスも奇をてらわずベーシックなところがいま求められる現代性といえるかもしれない。ローマンインデックスとギヨシェ彫りは強力なカルティエのシグネチャー。どんなデザインでもカルティエに見える。ほかに2タイムゾーンのモデル、フライングトゥールビヨン搭載モデルがある。ケース側面はサテン仕上げ、表裏はポリッシュ仕上げを施すなどディテールの丁寧さがカルティエならでは。ローンチ初年度から値ごろ感のあるSSモデルもある。●18KPG。ケースサイズ41×40mm。自動巻き。アリゲーター・ストラップ。220万円。

カルティエは2016年、複雑時計のコレクションに新型ムーブメントを二型開発して、スケルトンモデルの進化形とアストロトゥールビヨンとミステリーウォッチを合体させた、まさにカルティエならではのコンプリケーションを追加した。さらにそれのみならず、カルティエでは初のクッション形ケースのメンズウォッチ新コレクションをも発表している。

総じてどのブランドも、景気の先行きが不透明な中、新規の開発には腰が引けた感のあった2016年春の新作発表会では突出していた。ハイジュエリー系やエナメルなどの伝統的な技法を駆使してアート作品を描き上げるメティエダールの分野で圧倒的な力量を見せつけるのは毎度のことだが、機械式時計の分野でも開発力にものをいわせるプレゼンテーションである。

男性用腕時計の発明者であったカルティエだが、その後再び機械式ムーブメントを製造し始めるのは10年足らず前のことだ。2008年に自社製フライングトゥールビヨン・ムーブメントCal.9452MCを開発してマニュファクチュールを宣言してから、いまやベースとなる汎用ムーブメントからコンプリケーションまで、なんと45型を持つまでになっている。

他ブランドからムーブメントの供給を受けることから始まったカルティエの機械式時計への返り咲きだが、歴史ある大メゾンが本気で何事かに取り組むと老舗のファインウォッチメーカーをも容易に脅かすということだ。そして誰もが認めるところだが、エステティクスのセンスは圧倒的である。

新コレクション「ドライブ ドゥ カルティエ」はカルティエならではのクラシシズムを基本に、エレガントであると同時にスタイリッシュ。ケースやダイヤルなど細部の仕上げの美しさに、由緒正しい高級感が漂う。

「クレ ドゥ カルティエ オートマティック スケルトン」。自動巻きローターまでスケルトン化。完璧なオープンワーク。●パラジウム。ケース径41mm。自動巻き。アリゲーター・ストラップ。参考価格575万円。
「ロトンド ドゥ カルティエ アストロミステリアス」。宙に浮くかのような不思議は4枚の透明サファイアディスクがミソ。1時間で1回転するアストロトゥールビヨンを載せて。●パラジウム。ケース径43.5mm。手巻き。アリゲーター・ストラップ。参考価格1860万円。世界限定100本。

※本記事は『PRESIDENT』2016年7.12号に掲載された記事をweb用に再編集したものです。