ダンディーのDNA――シャネル CHANEL
ブランド初となる自社製造ムーブメントを搭載した「ムッシュー ドゥ シャネル」を披露したシャネル。しかもそのムーブメントはジャンピングアワーとレトログラード式分表示という二つの特殊な機構を備えたものだった。
ムーブメントの内製化はここ数年、時計専業メーカーに限らず見られる動きだ。背景にはムーブメント供給の問題や高級路線を狙う各社の思惑が垣間見える。さてシャネルはどうかというと、初の自社製キャリバーが前述のような独創的なもので量産や機能拡張に向くものではないことからすれば、マニュファクチュールを宣言することが目的ではなく、デザイン面からのアプローチだったと見るのが自然だ。
そのデザインは、これぞシャネルらしさの発露だと言っていい。ラウンド形ケースやジャンピングアワー機構には高級時計の伝統が息づくが、ハンドの形やアラビア数字の書体、さらにムーブメントの設計等は古典に返ることなくむしろどこまでもコンテンポラリーだ。かつて2000年に発表した「J12」でスポーティーでモダンという男の新しいスタイルを切り開き、いままたクラシシズムとモダンが融合した現代的なエレガンスを提示してみせた。ダンディズムの解釈は時代とともに変容するが、そのDNAはこの時計にも確かに受け継がれている。
※本記事は『PRESIDENT』2016年7.12号に掲載された記事をweb用に再編集したものです。
※価格はすべて税別価格です。
※本特集内で使用している略語は、18K=18金、SS=ステンレススチール、YG=イエローゴールド、WG=ホワイトゴールド、PG=ピンクゴールド、RG=ローズゴールド、Pt=プラチナを表します。
text : d・e・w