均時差機構の追求にブレゲのDNAを見る――ブレゲ BREGUET
時計製造をリードするブレゲの矜持
周知のように、アブラアン=ルイ・ブレゲは時計史の中でひときわ強い輝きを放つ偉大な発明家であり革新者だった。時計の歴史を2世紀早めたといわれるが、ブレゲひげぜんまい、ブレゲ針、ツインバレル、パラシュート衝撃吸収装置、自動巻き機構、クロノグラフ、永久カレンダー、ミニッツリピーター、そしてトゥールビヨン……と彼の発明を列挙してみると、現代の機械式時計の機能の多くはブレゲの発明に依拠していることがわかる。
現代のブレゲもまた然り。その遺伝子を受け継ぎ、技術革新への注力に怠りない。シリコン素材のひげぜんまいや脱進機、テンプの安定性を保持するマグネティックピボットの発明、ミニッツリピーターのための音響研究の深化など、時計製造の技術分野で最先端を走っている。
超複雑を超シンプルに
そして今年、ブレゲが挑んだのが均時差表示機構である。コンプリケーションの中でもレアであり、進化・発展の余地がある機構である。
均時差とは太陽の南中を基準にした「真太陽時」と便宜的に一日を24時間と定めた「平均太陽時」の時間差のこと。地球の公転が楕円軌道であり、地軸が23.4度傾いていることからこの差が生じる。
真太陽時は規則正しい周期で変化しており、年間の均時差はプラス16分23秒.マイナス14分22秒。真太陽時が24時間になる日が年に4日。理論的にはこれらをカムを使って機械的にプログラムすれば、真太陽時を表現することは可能となる。だが、言うは易し行うは難し、それを腕時計という極小の世界でできるかどうか……。もともとクロックや懐中時計に組み込まれた機構である。
今回ブレゲが発表したのは見た目は驚くほどシンプル。同軸上の2本の分針で直感的に均時差がわかる「エクアシオン・マルシャント」(ランニング・イクエーション)といわれるタイプ。手間な計算を要する一般的なインダイヤル目盛り式から一歩も二歩も前進している。
※本記事は『PRESIDENT』2017年6.26号に掲載された記事をweb用に再編集したものです。