複雑時計を複雑につくるのはランゲにあらず――A.ランゲ&ゾーネ A.LANGE & SÖHNE

「トゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”」。チェーンフュジー(鎖引き)、トゥールビヨン、クロノグラフ、スプリットセコンド、永久カレンダーを搭載。5つの複雑機構を巧みに組み込んだランゲの一つのマイルストーンだ。薄型化、動力効率化のため、永久カレンダーをベースムーブメントに組み込んだキャリバーL133.1を新開発。●Pt。ケース径43mm。手巻き。アリゲーター・ストラップ。48万ユーロ(参考価格)。世界限定50本。〈A.ランゲ&ゾーネ〉

A.ランゲ&ゾーネは2017年春に7型の新作を発表、うち5型が新型キャリバーを搭載する。2015年に刷新した基幹キャリバーにムーンフェイズを載せたものや、10進法のソヌリなどを新たに自社開発したが、なかでも今年のハイライトとなったのが「トゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”」である。

ランゲでは、フュジーという螺旋状の部品と香箱をチェーンでつなぎ、ぜんまいのトルクを一定に保つチェーンフュジー機構を製作、その機構を持つ時計には“プール・ル・メリット(有功勲章の意).という称号を与えている。1994年ランゲ再興後初のコレクションで第1作を発表。5作目となる今作では五つもの複雑機構を搭載するが、単にモジュールを積み重ねて厚くなり、互いに干渉するようではランゲの完璧主義に反する。そのためベースムーブメントに永久カレンダー機構を組み込んだ一体型キャリバーの開発に挑んだ。複数の複雑機構の組み合わせをより簡潔に、より効率的に製作できる力量こそが近年ランゲが表掲する「メカニカルマスター」の意味するところ。厚さ10.9ミリに抑えられた新型キャリバーが思想から技術開発力までランゲの多くを物語る。

2017年のバーゼルワールドで、ブライトリングは自社開発・製造のスプリットセコンドクロノグラフ、キャリバーB03を発表。スプリットセコンドとは、クロノグラフ針とスプリット針の2本の計測用秒針により、ラップタイムや二つの出来事の時間差を計測できる機構だ。クロノグラフの中では最上位の機構にあたり、製造が困難な複雑機構の一つとされる。ブライトリングは2004年にクロノグラフ・ムーブメントの完全自社製造への切り替えに着手。自動巻きのキャリバー01、手巻きのキャリバーB02、GMT付きのキャリバーB04などを経て、今年は最高難度のスプリットセコンドへと到達。一つの集大成を見たと言っていい。

しかもこのキャリバーB03は、設計を根本から見直して二つの特許を取得した点で特筆に値する。一つが、スプリット秒針の作動時にクロノの計時精度とパワーリザーブへの影響をなくす新形状のパーツ。もう一つがスプリット秒針の停止を高精度で行うことができ、かつ製造工程の簡素化も実現した新設計の停止機構である。また同キャリバーは、70時間以上のパワーリザーブを有し、メンテナンス性にも優れたキャリバー01をベースとしているため、それらのスペックも備えている。

このキャリバーB03を載せた新作が「ナビタイマー ラトラパンテ」。ケース素材はSSと18Kレッドゴールドの2種あるが、同ブランドの記念碑的キャリバーをその目でも楽しみたいなら、シースルーバック仕様のレッドゴールドモデルを。

※本記事は『PRESIDENT』2017年6.26号に掲載された記事をweb用に再編集したものです。