色柄Vで主張せずともスーツは雄弁にクラス感を語る
前回、無地のネイビースーツには柄シャツ×柄ネクタイで個性を演出すると書いたが、今泉さんはあえて色も柄も抑えたストイック極まりないスタイリングだ。しかし、よく見ると、これが実にこだわった内容であることがわかる。スーツはいまやナポリの最先端ブランドであるスティレ ラティーノ。ナポリスタイルの生みの親ともいわれるアットリーニの系譜を継ぐブランドで、本来グラマラスなフォルムとワイドラペルが特徴なのだが、この「ヴィンチェンツォ」モデルはビジネス使いもできるスマートなもの。素材はモヘア×リネン×シルクの三者混。ミッドナイトネイビーの濃紺色は、フォーマルウェアに通じる品格が備わっている。「シンプルな服こそ、良いものを」という思想は、知的な紳士ならでは。これみよがしに色柄を使うスタイルへのアンチテーゼとして雄弁でもある。
text:Zeroyon Lab.
photograph:Yuko Sugimoto