靴下を履いていないと錯覚するほどの極上のフィット感
紳士のスーツスタイルの前提条件として、顔と手以外の肌を人目にさらさないことがある。電車などで座っているサラリーマンが脛をさらしている姿を見かけることがあるが、間の抜けた印象でスーチングのマナー違反に当たる。そこで、足を組んだり、しゃがんだりしたときに肌が見えない長めのソックス、いわゆるホーズを選ぶことが重要なファクターとなる。しかもワンポイントのブランドロゴで主張するのでなく、あくまでも無地デザインに徹して作りの良さで品格を醸すのがスマートだ。
足るを知るビジネスエグゼクティブに愛されている靴下ブランドこそ、名門パンセレラ。1937年にイギリス中部のレスターで創業して以来、英国国内の多くの百貨店、名だたる紳士服店で扱われていることからも、その信頼の高さが窺い知れる。パンセレラの中でもスタンダードなこちらのホーズは、ブランド独自の仕様で撚られたコットンとナイロンの混紡糸に、シルクのような艶感をもたせるマーセライズ加工を施し、上品な光沢を放っている。そして、足を入れたときに感じる、心地よく吸いつくようなリブのフィット感。軽くて、締めつけのない履き心地は、仕事で一日着用した後も足に疲れが残らない。
たかが靴下。目立つパーツではないからなのか日本ではホーズが浸透せず軽視されがちであるが、されど靴下。トラウザーと靴をスムーズにつなぐ役割として脇役的な存在ではあるが、軽視するのは惜しまれる。その扱い方に、仕事に対して手を抜かず細部まで丁寧に行なうビジネスエリートとしての矜持を人は垣間見ることだろう。
text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki