第二十五回「身だしなみは至近距離でわかる問題」

「外出先で気がついたときが手入れどき」

【M】先週引っ越したのよね。その後どう? 転居地での新生活は?

【A】まあまあかな。まだ慣れないけどね。でも周辺に美味しいレストランもあるし、自然も豊富だし。住みやすそう。

【K】それは良かったね。もう市役所へ行って住民票とか手続きしたの?

【A】もちろん。でもなんだか混んでたのよね。ちょっと待たされて席に着いたら担当してくれた人が40代ぐらいのスラッとした男性だったの。ちょっといい感じの人~、って思って話を聞いてたんだけど、結構面と向かって話をしていたら眉毛が気になっちゃって。

【M】それって眉毛が長くて有名な村山元総理みたいだったってこと?(笑)

【K】いたね~! 白髪眉毛の村山元総理。懐かしい~!(笑)

【A】あはは。でもその人は結構ちゃんと手入れしている感じなんだけど……。それが一本だけ長い眉毛がピヨ~ンって出てたのよ。

【M】えええ? それは気になる!

【A】もう少し距離があれば気にならないかもしれないんだけど、役所の手続きってカウンター越しに面と向かって座るじゃない? そしたらもう気になっちゃって。

【K】それ言ってあげたいね~! 意外と見られているということ。営業や対面式で話をする人は特にこういうエチケット的なことは気にしなきゃダメよね。清潔感って大事だから。

【A】本当に。外出先でも手入れできるキットみたいなアイテム持ってればいいのに。私、夫に持たせようかな……。何かいいの知ってる?

「トゥルフィット&ヒルはチャールズ皇太子やサー・ウィンストン・チャーチルまでも通った世界最古のバーバーで、その老舗が生産しているグルーミングキット。旅行などの際に携帯しやすいように近年登場したアイテムです。黒のハードケース入りには、爪やすり、ハサミ、ピンセット、爪切り、ナイフが5種類セットで、刃物は有名なドイツ・ゾーリンゲンで作られています。驚くほどに切れ味がいいので気をつけてほしいですが、ナイフは薄皮を処理するときに使うことができます。」ヴァルカナイズ・ロンドン井上さん

【M】あるある。紳士の国イギリスではグルーミングアイテムが充実してるわ。ただハサミと爪切りでいい、と言われればそれまでなんだけど、そこに少しだけお洒落心があるレザーのケースに入っていたりすると使っているところを人に見られても格好がつくわね。昔甘皮処理は小型のナイフを使っていたらしいんだけど、その名残でまだセットに含まれているものもあるみたい。ちょっとお洒落よね。

【K】ワンセットあれば、それ以上あれこれ揃える必要もないしね。バッグにポンって入れておくだけで安心だし、気になったら外出先のお手洗いで使えるしね。

「ソフトレザーでコンパクトな4点セットは小さいブリーフケースにもすっぽり収まるので持ち運びに便利。出張先でのヒゲの手入れや一番気になる鼻毛など毎日欠かさずにチェックができます。お手頃の価格なのでギフトとしても人気です。」ヴァルカナイズ・ロンドン井上さん

【K】それに爪が伸びているのもやっぱり嫌よね。普段のだらしない生活が見えてしまう気がする。若いならまだ許されることも、いい大人になってからは風当たり強くなってしまいそう。

【M】わかる、それってエチケットの問題じゃない。女性はそういうところかなり気になるのよね。男性ってその部分が意外と欠けている人いるじゃない? お洒落だったりすると尚更もったいない。

【K】女性にとって清潔感って最重要項目だからね。「不潔=受け入れられない」の方程式は崩れることはないからね。特に年齢が上がると余計にね。

【A】それいい! 男性全員に持たせたいわ。特に40歳以上ね。

【M】でも夕方になったらお手洗いでみんなグルーミングしている絵も結構怖いね(笑)

【K】それって夜のお姉さんたちにモテたいってこと?

【M】そうそう。私たちが懸命にメイク直しするのと同じよ。

【今回ご協力いただいた方】

ヴァルカナイズ・ロンドン マーケティングマネジャー井上雅士さん
英国のモノを大切にし、次世代に引き継ぐ文化など、日本と似た価値観に親近感を感じているという井上さん。個性的なのに、品の良さがあふれ出ている装いはまさに英国紳士そのもの。親しみやすい笑顔と優しい口調で語られる幅広い知識にスタッフ一同すっかり癒されてしまいました。

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファッション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファッション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photograph:Ayako Nakamura
text:re*colabo