第八回「なぜかサングラスで悪ぶりたい問題」

「日本人にはサングラスが似合わないの?」

【A】いい天気~! 本格的に暑くなる少し前のこの時期って、オープンカフェでお茶するには最高よね。

【K】「自然や通行人を眺める」「なんとなく注目される」っていう、見る見られる関係が生まれるユニークな場所よね。実はオープンカフェの開放的な雰囲気や人が憩う姿って、街にゆとりと彩り、そして装飾的な一面も加えてくれているのよね。

【M】すごいじゃない! 本当にその通りよ。分析の腕を上げたわね!(笑)

【A】ちょっと二人とも大変よ! 右斜めの方角に、まるでサングラスが歩いているような人がやってくる。真っ黒で大きなレンズ……推測するに、昔購入したものを押し入れから引っ張り出してきたんだわ。

【K】本当だ。意外と小さめな顔をしているのに、明らかに顔とサングラスの大きさのバランスが合っていないわね。素敵な装いをしているのに、このサングラス一点のせいで、全体的に古臭い印象になってしまっている。

【M】もったいないわよね。もう一人もサングラスの大きさ自体はそんなに大きくないけれど、正直なんだか変だわ……。わかった! これは大きさのバランスではなく、まゆげが丸見えのせいよ。

【A】まゆげと目の間隔が広くて、鼻の付け根が低い人が、小さすぎるレンズや薄すぎる鼻パットを選ぶと、まゆげ丸見え現象が起こってしまう。これが馴染んでなく見えてしまうのかも。

【K】ちょっと左斜め方向を見て、今度はサングラスを素敵にかけこなしている人を発見! ドラマ「探偵物語」の松田優作を彷彿させるようなティアドロップ型のサングラスをかけていて、とってもワイルドでセクシーな印象よ。

【M】ティアドロップ型を素敵にかけこなしているわ。彼の顔の形は面長よね。この形の人には顏の長さを感じさせないティアドロップはおススメ。名前の通り、しずくの形をしたサングラスで、下部分が頬にかかってくるので、顔の長さを際立たなくしてくれるの。自分を素敵に見せてくれるサングラスがどんなものかが、わかっている証拠よね。顔は彫りが浅い人は、少し大きすぎるようなレンズのデザインには負けてしまいがちよね。あの素敵な彼は、サングラスをはずしたら、平井堅ばりの顔の濃さとお見受けしたわ。

【A】自分の顔の形によって、似合うサングラスが決まってしまうということなのね。じゃあ、あまりサングラスで冒険はしないほうがいいのかしら。

【M】アキ、そんなことないわ! 実はサングラスって、本当に奥深いの。フレームの形以外にも、冒険できるピントが色々あるのよ!

【K】【A】マリ姉、聞きた~い!

【M】話しが長くなりそうだから、まずは冷たいビールで喉を潤させて。

大人がステキに見えて、かけても違和感のないサングラスとは?

「英国の老舗アイウェアブランド『OLIVER GOLDSMITH』が、ブランド設立88周年を迎える2014年に100周年に向けてスタートさせたのが、『OG×OLIVER GOLDSMITH(オージーバイオリバーゴールドスミス)』です。この商品は、ずばり顔なじみが良く、肌の印象とも違和感なくマッチする、手に取りやすい一本。逆台形のレンズに、フロントの上辺であるブロウラインは外に行くに従い、ゆるくカーブを描いて下がるようなデザインで、様々なスタイルのファッションに馴染みやすいと思います。ゆったりとした肩ひじ張らないデザインとブラウン系のカラーレンズとフレームが遊び心を演出してくれています。誰にでも取り入れやすいですね。」(ISETAN MEN'S PR 江島さん)

【M】先ずは、自分がかけていて心地いい一本をチョイスしたいわよね。

【A】顔の印象が大きく変わるだけに、似合ってないかも、恥ずかしいっていう気持ちも大きくなりがちよね。それならば、通常かけている眼鏡と同じ形にしてみるっていうのもアリよね。

【K】そうね、それならば自分自身違和感なくかけていられるわね! 最近のメガネのトレンドがクラッシックで、丸眼鏡をかけている人ってすごく多いじゃない。だからサングラスでもその形を選ぶのもいいかも。サングラスにもメガネと同様に様々なシルエット、デザインがあって、ウェリントンやボストンなどの大まかな形は顔によって似合う、似合わないがはっきり分かれるから、手持ちの眼鏡を参考にして選ぶと、見た目もそしてかけている本人も違和感なくかけられるわね。

【M】それと、こだわってほしいのがレンズの色。サングラスをイメージすると思い浮かぶのが真っ黒なレンズよね。でも、色が薄めのサングラスのほうが似合う人もいるの。つまり、真っ黒がスタンダードと思っている人の中には、サングラスを選ぶ段階で、自分に似合わない色のサングラスを選んでしまっている可能性が高いというわけ。できるだけ肌の色ととレンズの色の差をなくすというのも、選ぶときのポイントにしてもいいかもしれないわね。

【A】今年は淡い色のレンズとメタルの組み合わせがサングラスのトレンドだし、真っ黒がスタンダードと思っていた人にも、カラーレンズに是非トライしてほしいわね。

【K】街でサラッとファッションアイテムとしてかけるならば、薄い色味のレンズのサングラスをかけるなんていいわよね。先ほどのサングラスが歩いているような人とは逆で、よーくみたらかけていたんだ! みたいなスタイリングも上品な気がするわ。

【M】そうね。ちなみにスクエア型も今年のトレンドなの。横長の直線的な形状が特徴で、知的で落ち着いた印象にしてくれるわ。さらにレンズが薄いカラーモデルを選ぶと、適度な抜け感でスタイリッシュさもプラスしてくれるし。無理せずさり気なくお洒落な感じね。

【A】薄い色のレンズって、少しハードルが高いって思っている人多い気がするの。でも、本当は色によって顏の印象を変えることができたり、肌色をキレイに見せてくれる効果なんていうのも期待できそうよね。

【M】そう思うと、年齢を重ねた人こそ、カラーレンズに挑戦してほしいところなのよね。

「薄い色のカラーレンズ、ポイントはメタルとの共存」

「1972年にスタートした日本のブランドEYEVAN。2013年に結成された新しいデザインチームが、今、本当に美しいと思う物をかたちにしたコレクションが『EYEVAN 7285』です。黒いフレームの内側に見えるメタルデザインが全体を引き締めるような印象を作り出しています。ゆるやかなラウンド型ですが、黒のフレームなので、甘くなりすぎず、どちらかというとモードな印象を醸し出しています。黒い縁のメガネの延長線上でかけていただけますし、あまり頑張りすぎていない、でもお洒落な印象が強い一本です」(ISETAN MEN'S PR 江島さん)

【M】ファッション同様にサングラスにもトレンドがあるのよね。さっき、話していたように淡い色のレンズとメタルの組み合わせは今年のトレンド。

【A】全身を流行の最先端でコーディネートするのに抵抗がある人も、サングラスみたいな小物でさりげなく流行を取り入れるっていうのもアリよね。

【K】大人がかけるならば、さりげなく存在感を発揮する一本をチョイスしてほしいところね。

【M】メタルって、フレームの部分だけに使うということだけではなく、デザインバリエーションが豊富なのよ。例えば、メタルフレームのフロントにセルを巻きつけたセル巻きや、フロントにプラスチック素材を用いたコンビネーションモデル。そして、中央のブリッジが2本ある2ブリッジモデルも流行の兆しなのよ。


【A】え? え? そんなに? でもそれだけあると、メタルフレームのどんなデザインを選ぶかっていうのもポイントね。存在感がある一本を選びたいところだけど、あまりに派手な装飾をしすぎていると、チャラいお兄さんになってしまいそうだし。

【M】フレームの色や形、レンズの色、そして今年のトレンドのメタルをよく吟味して選ぶことで、新たなる装飾という名のデザイン性を装いにプラスすることができそう。シンプルなスタイルはどんなサングラスを掛けているかだけでお洒落を語れるからね。

「職人技が光る端正な作りが、洗練された表情をプラスする」

「こちらの商品はDCブランド「NICOLE(ニコル)」の創設者であり、世界のアイウェアの歴史の中で最も影響力のあったデザイナーの松田光弘氏が生んだラグジュアリー・アイウェアブランド「MATSUDA(マツダ)」で作られた一本です。日本の職人の手による技術と、アセテート、チタニウム、ステンレス、スターリングシルバー、18Kといった厳選された素材がすべての製品に使用され、美術品のような繊細な彫刻模様と誰にも真似できないパーツの複雑さは、高い技術力を誇る「Made in Japan」でしか成しえないMatsudaの真骨頂です。デザイン性の高さがありながら、掛けたとき驚くほどに顔馴染みがいいので、是非かけてみることをお薦めします。レンズも薄いブルーですので、洋服とのマッチングもさほど難しくはありません。何本目かのサングラスとしてお手元に置くのにおススメです」(ISETAN MEN'S PR 江島さん)

【K】眼鏡やサングラスでメタルといわれたら、フレームがメタルで作られているというイメージよね。ちょっと鋭い印象の……。

【M】そうよね、だけど、大人の男性に掛けてほしいのは、メタルによる繊細な施しがされている、単なるミニマルなメガネとは一線を画すような一本なの。施しの部分に職人技が光るようなデザインがプラスされると、眼鏡を掛ける人のこだわりの強さを表現できて、それだけで個性を表現できるし。

【K】「コストをかけずに生産する」というモノづくりが主流の今、「時間とコストをかけてつくる」、そんなモノづくりをしているブランドの一本をチョイスしていることで、その人の考え方も浮き彫りになるのね。

【A】オブジェのような感じで、細部にわたって細工がしてあるサングラス。そんな一本は外す時には頭には乗せず、そっと机に置いてほしいわ。見つけたら迷わず、これ誰の? って聞いてしまう(笑)

【M】サングラスって、敬遠して来た人も多いと思うけど、ベーシックな装いをするときのポイントとして実は一番簡単にトレンドのセンスとして取り入れられるものなの。実は見る人が見れば、それと靴だけで世の中のトレンドを読んでいるのがわかるし。機能性とトレンド、そして自分に何が合うかよく吟味して欲しいところね。

【K】ちょっと、またとグラサン族がやってくる! まだまだ話はつきそうもないわね! ビールもう一杯頼んじゃおう!

【M】【A】賛成!

【今回ご協力いただいた方】

三越伊勢丹紳士MD統括部新宿紳士営業部 ISETAN MEN'S PR 江島 基 さん
豊富な商品知識を基に抜群のセンスでチョイスしたアイテムを、巧みな話術で解説。こんな店員さんに接客してもらったら、予算オーバー間違いなし!

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photo:Mutsuko Kudo
text:re*colabo