第七回「大人が履くべきローファー問題」

「貴公子が履いていたローファー」

【K】あの小籠包、ホント美味しかったね!?

【A】たまには、ちょっと足を延ばして中華街で打ち合わせっていうのもいいね。このまま帰るのはもったいないし、ちょっと山下公園で散歩しない?

【M】【K】賛成!

【A】ねえ、このクラシカルな建物、ニューグランドじゃない?

【K】さすが歴史を感じさせる重厚感。そうだ、ここでスイーツ食べようよ?

【A】いいね! 入ろ!

【M】ちょっと待って! また食べるの?(笑)散歩じゃなかったの~?

【A】見て~! すごい、この大階段。まるでタイムスリップしたみたいな空間ね。

【K】ここにいる人がみんな貴族に見えてきた(笑)

【M】ねえ、見て。そこに、マッカーサーと貴公子がいるわ。

【A】本当、パイプはくわえていないけど威厳と風格があるところがちょっとマッカーサーに雰囲気が似ている。一緒にいる日本人も、それに負けないオーラがあるのがすごい。まさに貴公子だわ。

【K】山手在住の貿易商の2代目42歳。アメリカ留学中にお世話になった大学教授が来日して、昼下がりのランチってとこかしら?

【M】また、ファッションから見る妄想が始まったわ(笑)。確かに名家の出を感じさせる出で立ちね。彼が履いているコインローファー、すごくいい靴よ。

【A】でも、コーディネートは普通なのよね。白ポロシャツにネイビーのパンツにローファーって、ちょっと間違えれば、オヤジ学生じゃない?

【M】服を生かすも殺すも靴次第っていうじゃない? くるぶしが覗くくらいの少し短めのパンツの裾丈が品良く垢抜けているし、あの素足で履いたローファーを際立たせているわ。

【K】それにしてもローファーって、アイビーボーイのイメージだったのだけど、あのローファー、なんか違う。どこが違うんだろ?

一見、普通のコーディネート。でも目が離せないのは……

「こちらのコインローファーは、内側の両サイドに革の芯地が入っており、足をフワッと持ち上げつつ、包み込むような構造になっています。そのため足の形をスリムでスマートにそしてエレガントに見せてくれます。体重を分散するため非常に疲れにくくフィット感にも違いを感じていただけるかと。ここまで足をあらゆる方向から考えた立体的な作りの靴はそうないと自負しております。」(エドワード グリーン 銀座店店長の中沢忠久さん)
「こちらのカラーは、最初から履き込んだかのよう風合いがありながら、最高の革を使用するエドワードグリーンならではの美しい経年変化を辿ります。インサイドストレート・アウトサイドカーブと呼ばれるラインを描き、ややシャープな木型から生み出されるエレガントなフォルムは、大人にこそ相応しいと言えます。シンプルなデザインほど、ごまかしが効かない。最高の革と技術を感じていただければ嬉しいですね」(エドワード グリーン 銀座店店長の中沢忠久さん)

【A】アイビーボーイって古っ! 久しぶりに聞いた言葉だわ(笑)。それってアンティークっぽい革だからなのかな?

【M】そうね。アンティークフィニッシュを加えた良質な革は、経年変化であの貴公子のものみたいに趣を出して雰囲気を高めていくのよ。

【K】それに優美なツヤ、細身で上品なフォルム、足の形がスッとして見えるね。甲が深めだからかな。

【M】甲が深めなのもそうだけど、良い木型で作られているのよ。それに細かなステッチでなければ出せないあの端正な雰囲気。クオリティの高さを窺えるわ。

【A】これは手入れをきちんとすれば、一生モノの靴になりそうね。

【K】クールビズにも是非取り入れてほしいローファーね。この前、紹介したニットパンツに合わせても絶対に素敵。あの靴が1足あれば、オンオフ困らなさそう。

【M】そうね、クールビズスタイルにもぴったりね。ただ、最近のビジネススタイルは自由度が増しているとはいえ、格式のある取引先を訪問するようなビジネスシーンでは、ローファーは避けた方がいいかもしれないわね。どうしてもカジュアルに見えてしまうから。

【A】素敵に見せることも重要、自分自身が心地よいファッションを楽しむのも重要、でもTPOによってはマナーを最優先に考えた方が良い時もあるってことよね。ところで、彼のスマートカジュアルは何点?

【M】文句なく、満点でしょ。

【K】ね、そろそろスイーツ食べに行こう?

【M】だから、山下公園へ散歩に行くってハナシはどうなったの?(笑)

【A】スイーツ食べた後、コンビニで缶ビール買って海を見ながら飲むっていうのは?

【K】アキ、意外と思考がオヤジ入ってるね。

【M】そうね……、でも結構嫌いじゃないかも(笑)

【今回ご協力いただいた方】

エドワード グリーン 銀座店店長の中沢忠久さん
店舗に入った瞬間、目に入ったのは中沢さんが履いていらっしゃったローファー。さすが!と唸るエレガントな足元に撮影スタッフの目は集中。穏やかに、誠実な受け答えをしてくださるその物腰はまさに紳士で、優雅な時間を過させていただきました。

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photograph:Ayako Nakamura
text:re*colabo