新型「メルセデス・ベンツ GLE」が2019年6月に発売された。最大の特徴はといえば、3列シートを備えた7人乗りになったことだ。加えて、伝家の宝刀(と私が勝手に名づけた)直列6気筒エンジン搭載「GLE 450 4MATIC スポーツ」も設定された。
4年ぶりという短期間でのフルモデルチェンジである。その背景には、安全技術および運転支援技術の“進歩”が速いことと、主市場である米国で、7人乗りの需要が大きくなっていることがあげられる。
北米のことはさらっと流してもいいのだけれど、なぜ7人乗りかをいちおう書いておくと、どのメーカーも口を揃えて「サッカーマムの存在が大きい」ことが理由という。
サッカーマムは小学生の子どもにサッカーを習わせている女性のことで、持ち回りでチームの子どもたちをグラウンドに連れていく。そのためにミニバン/SUV市場が拡大してきたともされる。
それはそれとして、こんなリッパなクルマを小学生の子どもをA地点からB地点まで運ぶために手に入れたら、それこそバチがあたりそうな贅沢というものだ。
ようするに、いいクルマである。まず走りが楽しめる。大きな理由が、パワートレインだ。「メルセデス・ベンツ GLE 450 4MATIC スポーツ」に搭載された3リッター6気筒エンジンは、さきにちょっと触れたように、すばらしいキャラクターである。
スーパーチャージャーが低回転域の過給を、そのさきをターボチャージャーが引き継ぐツインチャージャーシステム搭載で、かつ、そればかりでなく、電気モーターを使って、発進時など過給機が追いつかない領域でのトルクを補っているのだ。
そのため全長で4930ミリ(先代比プラス100ミリ)もあり、車重が2390キロもあるのにかかわらず、スッと出て、グイグイと速度を上げていく。そのときのスムーズすぎる加速力は、SUVというよりスポーツカーを目指して開発したのでは、といいたくなるほどだ。
エンジンの最高出力は270kW(367ps)、最大トルクは500Nmだ。大きなトルクを利して、ゆったりとした気分で走らせるのが、ほんとはよい。ストローク感があり、よく動く足まわりや、クイックすぎないステアリングの設定によって、快適なドライブが堪能できる。
足まわりは「AIRマチックサスペンション」が標準装備される。電子制御ダンパーは、「ダイナミックセレクト」というドライブモードセレクターと連動して働く。「コンフォート」モードはリラックス感覚、いっぽう「スポーツ」モードではダンピングが締められ、瞬発力もより高くなるという、いい意味での二面性が味わえる。
内装も魅力的だ。ダッシュボードの造形をみると、これまでメルセデス・ベンツ車は円形のエアコン用アウトレットが並んでいたが、新型GLEでは四角い吹き出し口が並ぶデザインが採用されている。
より劇的な効果としては、暗いところでドアを開けたときの、アンビエントライトだ。昨今の高級セダンのトレンドともいえる、室内を彩る色調変更可能なアクセント照明は、メルセデス・ベンツが先鞭をつけただけあって、今回は、使う範囲がより大胆だ。
具体的には、センターコンソールに設けられたクロームコーティングされたグラブハンドルまわりに、アンビエントライト用のLEDが美しいパターンを描いている。
とくに試乗車ではクロームのハンドルに加え、ブラックレザーに覆われたセンターコンソールと、ホワイトのシート地というコントラストの強い配色に、アンビエントライトがなかなかよいかんじのアクセントを添えている。
新型GLEは日本では3つの車種での展開だ。まず今回の「GLE 450 4MATIC スポーツ」(8パーセント消費税込みで1132万円)が販売された。消費税が10パーセントになると、価格が1153万円へと21万円も上がる(やれやれ)。
8月に「GLE 400 d 4MATIC スポーツ」(8パーセント消費税込みで1089万円)、11月以降に「GLE 300 d 4MATIC」(10パーセントの消費税で940万円)が予定されている。
小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。