――服装に気を使うとか、おしゃれに装うというと、周囲から浮いていることになりがちですが、通常のビジネスシーンで目立ち過ぎず、スタイリッシュに装うにはどうすればいいでしょう?

まずクレイジーな色のものを着ないことですね。これがルールNO.1です。男性が周囲から浮き上がらず、悪目立ちせずに、もっとスタイリッシュに着こなしに華やかさを加えたい場合、洋服を選ぶことにもっと注意深くなるべきです。ネイビーかグレーのスーツにストライプのシャツは大丈夫です。必ずしもブルーかホワイトである必要はありませんが、陰影のあるブルーのシャツなら自分のスタイルをつくることができます。派手すぎるタイは避けるべきですが、保守的すぎるのもよくありません。ポケットチーフもいいですね。個人的には白のポケットチーフ、それも素材はリネンだけです。派手すぎることなく、自分のスタイルを加えることができる、ブルードットやピンドットのポケットチーフもおすすめです。

――1年中、冬でもリネンですか?

はい、1年365日です。

――さぞかし多くの白のリネンのチーフをお持ちなのでは?

実は2枚だけです(笑)。洗濯して、乾いたらアイロンをかける、これだけです。

――ビジネスマンはオリジナリティをどう服装で表現するべきでしょうか。

ほとんどの男性はブルーかネイビーのスーツを着ています。私にとってのベーシックスーツといえば、ピークドラペルのシングルボタンスーツです。普通のスーツよりはスタイルがありますが、ブルースーツであることに変わりはありません。少しドラマティックで、エレガントで伝統的な装いです。チケットポケットも好きですね。英国的なテイストが加わると思うのです。ワイドスプレッドのドレスシャツのほうがボタンダウンより好きです。襟に角度があるので、多くの人がビジネス向きのシャツとは思っていないようですが、無地かピンドットのタイを合わせると、スタイルに個性が出ます。私が好きなのはクラシックなスタイルです。白やブルーのシャツはドレッシーでエレガント、まるで古いハリウッド映画のスターのようです。ダブルブレストスーツもお薦めです。スタイリッシュで魅力がありますね。周囲にいる他の男性に比べ、特別な存在感を与えることができる。同じ理由でシングルボタンスーツもピークドラペルが好きなのです。

――ラルフさんはご自身で確固としたスタイルをお持ちですが、いつ頃からご自身のスタイルを認識されましたか?

何年も前、スーツを着始めた頃からです。今と違って様々なタイプのポケットチーフを挿していました。ある日鏡を見て、そのスタイルが好きじゃないことに気づいたんです。ホワイトリネンのポケットチーフを挿した時、これが私のスタイルだと思いました。リネンはクリーンな質感で私の顔に馴染んでいました。シリアス過ぎず、華やか過ぎない。ペイズリーも合うとは思いましたが、白のリネンは私が理想とするスタイルに合っていたんです。

――自分のスタイルはどのように見つければいいのでしょう?

リサーチすることです。まずは街中のショーウィンドウをみること。必ず何か発見がありますし、お店のスタッフも参考になります。自分が好きだと思う服装をしているスタッフなら、いつも良いアドバイスをくれるでしょう。自分が着ていて心地いい着こなしを見つけたら、それがあなたのスタイルになります。そこから雑誌、ショップウィンドウ、スタッフから学んで、自分のスタイルを確立していってください。

――本日お召しになっているものを解説していただけますか?

このジャケットを気に入っているのはちょっと変わったファブリックを使っているからです。メッシュ、つまりネット状になっています。ただのクラシックなブルーブレザーは着たくなかったんです。シャツはブルーとホワイトのストライプのものを選び、レジメンタルタイを合わせました。


これにレジメンタルタイを選びました。私は「そのネクタイはどこで購入したのか」と聞かれるような、目立つタイはつけたくないんです。そこでニットタイにしました。コンサバティブですし、リネンのポケットチーフと合わせるとよりスタイリッシュになる効果があるように思います。パンツはブラウンのリネンです。ここでも人々の中で目立ちすぎないよう心がけています。控えめなエレガンス、それがふさわしいと思ったのです。

――柄やカラーではなく、ファブリックといった素材の特性に注意をはらうべきなんですね。

ポール・スチュアートのストアに来てくだされば、多くの製品が見つかることでしょう。一見同じダブルのブレザーに見えても、同僚が着ているものとは違う新しいクラシックがみつかるはずです。

――ラルフさんのお話をうかがうと、「快適さ」と「自信」が男性の着こなしにおけるポール・スチュアートのキーワードのようですが。

まず重要なのは「自信」です。もし10人の人にアドバイスを求めたら、自分のアイデンティティを見失ってしまいます。自信を持って着こなすことが最も重要です。自信を持てなかったら、信頼できるセールスマンを見つけるべきです。一度、服を着て自信がつくと、もっと新しい服が買いたくなりますよ。


――読者の方に、何をポール・スチュアートで買うべきか教えてください。

全部ですね(笑)。最初に買うべきはネイビーかグレーのスーツ、これなら自分の必要に応じて、他のものとコーディネートできます。ベーシックアイテムで始めることは、自分のスタイルをつくるのに最善の方法です。

長谷川喜美/Yoshimi Hasegawa
ジャーナリスト。イギリス、イタリアを中心にヨーロッパの魅力を文化の視点から紹介。メンズスタイル、車、ウィスキー等に関する記事を雑誌を中心に執筆。最新刊『サルトリア・イタリアーナ(日本語版)』(万来舎)を2018年3月に上梓。今年、英語とイタリア語の世界3カ国語で出版。著書に『サヴィル・ロウ』『ハリスツィードとアランセーター』『ビスポーク・スタイル』『英国王室御用達』など。

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