マルチタイムゾーンの腕時計とは、複数の時間帯の時刻を知ることができる腕時計のことを指す。一般的に、GMTやデュアルタイム、2タイムゾーンと呼ばれるものは2つの時間帯の時刻がわかるもので、時針と同軸にGMT針を備えたものや、第2時間帯表示用のインダイヤルを備えたものが大半である。

一方で、世界24都市、36都市、またはそれ以上の都市の時刻が読み取れるものをワールドタイマーと呼び、こちらは都市名が書かれたリング(やベゼル)と24時間表示リングで各都市の時刻を知らせるものが主流だ。またクオーツ式まで目を向けると、時刻を知りたい都市名をセットするだけで、時分針やカレンダーが自動的に修正されるものや、Bluetooth®経由でモバイルから時刻情報を取得する便利な機能も登場している。

こうした時計は、世界を相手にする国際派のビジネスパーソンにはマストといっていいツールだ。スマホがあれば十分という声も聞くが、スマホを操作することなく、手元で海外の時刻がわかるスムーズさは、一度使ったら手放せないもの。わずらわしい時差計算を省くための実用機能であるだけに、いくつの都市の時刻を知りたいか、時刻を知りたい都市は頻繁に変わるのか、海外に行くことが多いのか、日本にいながら相手にするのか……など、自身のビジネススタイルと照らし合わせて最良の一本を選びたい。

使い勝手に優れたアラーム付きデュアルタイマー
パテック フィリップ「アラーム・トラベルタイム5520P」

プラチナケース。ケース径42.2mm。自動巻き。3気圧防水。カーフ・ストラップ。2470万円(税別)

2つの時間帯の時刻を示すトラベルタイム機構に、アラーム機能を加えた新開発ムーブメントを搭載。2本の時針でローカルタイム(現在地時刻)とホームタイムを示し、左右の小さな丸窓の色でそれぞれの昼夜を表示する。ローカルタイムの時針は1時間単位で前後に調整できる。ローカルタイムに連動するアラーム機構は15分単位で設定が可能で、12時位置の2つの小窓にアラームの時刻を、その下の丸窓に午前・午後6時を境にして午前は白、午後は青を表示する。ユーザビリティーに優れた設計はさすがパテック フィリップ だ。

視認性、操作性に優れる2タイムゾーン
IWC「パイロット・ウォッチ・UTC・スピットファイア“MJ271”」

ブロンズケース。ケース径41mm。自動巻き。6気圧防水。カーフ・ストラップ。109万円(税別)。世界限定271本

今年リニューアルされたIWCの「パイロット・ウォッチ」コレクションから登場した2タイムゾーンウォッチ。セカンドタイムゾーンは扇形の小窓に24時間式に表示されるため、ホームタイムとローカルタイムが判別しやすい。24時間ディスクはリュウズ操作で1時間ずつ前後に調整でき、操作性にも優れる。英国の往年の戦闘機、スピットファイアに着想を得たモデルで、“MJ271”というネーミングは、今年世界一周飛行を予定しているスピットファイア機の製造番号に由来。ブロンズケースの経年変化も楽しめる、ファン垂涎の限定モデルだ。

多機能と薄型を高度なモジュール技術で両立
オシアナス「マンタ OCW‐S5000C」

ケース、ブレスレットはチタン(ブルーAIP)。ケース径42.3mm。ソーラー。10気圧防水。22万円(税別)。世界限定1500本

テクノロジーとエレガンスをテーマに時計づくりを行うオシアナス。中でも、とりわけエレガンスに重きを置いた「マンタ」ラインから、今年フルバージョンアップモデルが登場した。電波受信、ソーラー発電、Bluetooth®経由のモバイルリンク機能、クロノグラフ、カレンダー表示など多数のモジュールを備えながら、ケース厚9.5mmという薄型に仕上げた。機械式にこだわりがなければ、国際派のビジネスパーソンにとっては非常に実用性の高いモデルだ。こちらはダイヤル外周にブルーからグリーンのグラデーションが美しいサファイアガラス製リングを採用した限定モデル。

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