第十回「クールビズなのに、バッグが軽快じゃない問題」
「装いを軽やかにする夏の鞄選び」
【M】それでは、引き続きよろしくお願い致します。
エレベーターホールにてクライアントをお見送りし、打ち合わせをしていた会議室に戻るマリ、クミ、アキ。
【M】みんなお疲れ様でした。引き続きこちらの案件よろしくお願いしますね。
【K】&【A】了解です。
【A】この季節、男性たちの装いはすっかり、クールビズ一色ね。実は私、男性クライアントとお会いする時に楽しみにしていることがあるの……それは、装いチェック! その装いが良い悪いということよりも、彼らの性格や人となりが見えてくるから面白いのよね。
【M】確かにそう。装いから仕事への姿勢が分かるってことも、沢山あるわよね。
【K】ただ、クールビズの季節はネクタイもジャケットもなくなって、引き算された軽い装いになってくるじゃない。それでもわかるの?
【A】そうなの、だからこの時期は小物チェックしているのよ。時計、靴、そして鞄。
【K】なるほどね。そういえば今日の松田さんの鞄、見た?
【A】もちろんよ! 真っ白なトートバッグ。バッグの側面に施された独特なドレープが特徴的で、立体感のある美しいフォルムだったわ~。目を凝らしてよ~く見ると、バッグ表面が「S」字に加工されていたのよ。気づいた?
【K】やだ~アキったら、そんなことばっかりみていたの? でも、私も見たわ!(笑)「S」字型押しの立体的なデザインがすっごく特徴的だった。一見、シンプルなデザインだけれども、随所に手の込んだデザインがさり気なく盛り込まれていて。あれこそ、洗練された大人に似合うトートバッグよね。
【M】トートバッグって、書類やPCも入って、なおかつ持ち運びしやすいから、ビジネスでも、プライベートでも使い勝手抜群よね。でも、デキる男性たちは機能性だけに重点を置かずに、デザインも良いものを選んでいるから埋もれないのよね。
【A】それとね……松田さんの無造作な鞄の扱いにも目を奪われてしまったの。
【K】ええ、見たわ! 鞄を置いていた椅子を遅れて到着した方に譲った時、自分の白トートを床に無造作に置いたわよね……高級感ある鞄なのに、白なのに床置き!? と一瞬思ったわ。“男らしさ”を感じてしまったの。まさにワイルドだろ~って感じ(笑)
【M】汚れ問題を気にして、白アイテムを敬遠してしまう人はいるわよね。夏という季節に白の鞄を投入するというのは、単なる“書類入れ”じゃなくて“ファッションの一部”としてバッグを捉えている証よね。男性たちには夏のクールビズのワンポイントとなるような鞄選びをしてほしいの。白以外のトートバッグでも、ちょっと表面に特殊な加工がしてあったり、トレンドの香りがするタックが寄っていたりすると高級感もだせるしね。学生が持っているような安見えトートとは異なるわね。
【K】もしあれが白じゃなくて、もう少し落ち着いた色だったらどうだろう......例えばネイビーとか?
【A】ネイビーも絶対いい! ビジネスシーンでも定番カラーだし、ジャケパンスタイルとかにすごく合いそう。それに普通のトートとは一味違うからクライアントの印象にも残るかも。
【M】嫌味なく目立てるから、ネイビーなら戦略的なチョイスと言えそうね。それにしても……二人は打ち合わせ中、松田さんのチェックばかりしていたのかしら(笑)
「カバンの中を必死に探す姿は不恰好」
【K】ビジネスマンにとって、鞄って相棒のような存在よね。毎日使うからこそ、デザインだけじゃなく、使い勝手がいいことも選ぶ際の基本になるわよね。
【M】トートバッグでいうと、「収納力」「ハンドルの長さ」「耐久性」ってところかしら。
【A】収納“量“という点では、トートバッグはクリアしてそうだけれども、色んな持ち物を持って移動するビジネスマンにとって、仕分けに便利かということもポイントよね。中身がごちゃごちゃして、モノを探すのに手間取るのは時間のロスよね。
【K】鞄の中がきちんと整理できている人は、頭の中も整理できているはずだし、仕事が出来るという印象よね。反対に、カバンの中を必死に探している人は不恰好よね。
【M】それと、意外と見落としがちなのが、ハンドルの長さ。沢山の荷物を入れたときにハンドルの長さが十分でなければ、手に提げないといけないから不便。トートバッグは、やっぱり肩掛けできる長めのタイプが便利よね。ハンドル以外にショルダーストラップが付属する2WAYタイプもいいけれど、デザイン的にはハンドルのみのほうがシンプルで汎用性が高い気がするわ。
【A】あとは、耐久性。物をガンガン入れて使えるものがいいわね。
【K】耐久性って、高い品質に担保されるもの。それと、縫製のクオリティや素材の品質。トートバッグの素材ってキャンバス、ナイロン、レザーが代表的よね。でも、どれを選ぶにしてもヘビーローテーションに耐えうる高品質な素材じゃないと安心して毎日使えないわよね。それに、しっかりした素材は見た目の上質感にも直結するわよね。
【M】高級な時計を選ぶように、ポイントとなるアイテムを1つ入れることを意識して鞄を選ぶことで、印象が随分と変わってくるということよね。夏のスタイルにとって鞄っていうのは、それくらい重要度が増しているってことを男性の方たちには意識してほしいわね。
【今回ご協力いただいた方】
豊富な商品知識を基に抜群のセンスでチョイスしたアイテムを、巧みな話術で解説。こんな店員さんに接客してもらったら、予算オーバー間違いなし!
【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。
re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。
マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。
クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。
アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。
photo:Mutsuko Kudo
text:re*colabo