第十六回「“スーツだったら大丈夫”の固定観念問題」
「ちょっとした“差”が印象を大きく左右する」
【A】今年もこの日が終わったね~。会社創立記念パーティー。
【M】本当にお疲れ様。クミもアキも忙しい仕事の合間にパーティーの準備大変だったよね。今年もステキな会場で、美味しいお食事♡ みんな存分にお祝い気分を楽しむことができたわ!
【K】すごく楽しかった! ただ、ちょっと気になったのが参加者たちの装い……。女性はこの会を楽しんじゃおうっていう気持ちがコーデに出ていたわね。若干やりすぎ? なんていう人もいたけれど、気持ちの高揚感を感じ取れてよかったわ! でも男性は特別感なんて何も感じられない装いの人がちらほらいたわ。
【A】クミ、わかるわ! せっかくのパーティーなんだから、少しは気にしてほしいわよね。実はそういうときにこそ仕事に対する姿勢が見えたりするし。どんなことを気にしているかって女子は意外と見ているのよね。
【M】そうそう。平日、仕事終わりからの開始だったというのもあるけど、いつもと代わり映えしないスーツで参加している人は結構いたわね。スーツのネクタイを外してただボタンを開けている人がいたのには驚いたわ! それじゃ単なる酔っ払いと同じ。見慣れた会社の人達との会だからリラックスしているのはわかるけど、残念だわ。
【K】迷ったあげく結局仕事と同じスタイルで参加する人は多いとは思う。でも、会合や会食にも仕事関係のものから格式高いものまであって、その時々の場面にふさわしい着こなしが出来る人ってステキだなって思うの。
【A】わかるわ! 今回の場合ならば、ポケットチーフをプラスするだけでもいいわよね、ジャケットの胸ポケットに色を差すことで、ノーネクタイでもほどよく華やかな印象になるしね。遊び心のあるスタイルならば、断然ボウタイがうってつけ! 結び下げるタイの代わりにつけるだけで、ちょっと気取った雰囲気も出せるし、なんだか楽しい雰囲気!
【M】シーンにあった着こなしでスタイルの幅は大きく広がるし、個性的で自分らしいスーツの楽しみ方も生まれてくるわよね。
【K】そんな中で、ひときわ目を引いたのが太田部長のスリーピーススーツの装い。ピカイチだったわ!
「フォーマル過ぎずに、自分に自信がつくスリーピース」
【A】目に留まったわ~! スリーピーススーツって、きちんとしている印象もあるし、全体的に特別感のある装いよね。それと……ジャケットを脱いだ瞬間、お洒落に見えるだけでなく、体を立体的にたくましく見せられることにも気づかされたわ! 目が釘付けになっちゃった♡ ウェストコートはジャストフィットなものを選ばないとだめね!
【M】かしこまった、クラシカルなイメージがあるスリーピースだけど、特別感を出す以外にもメリットがあるのよね。先ずは、ジャケットを脱いでもだらしなく見えない。
【K】ジャケットを脱いでシャツ一枚になると、シャツのチョイスによっては、しまらない装いになってるときがあるかも。そこに、ウェストコートを一枚着るだけで、上品に落ち着いて見える! ジャケットを羽織るまでもないオフィス内なんかだったら、見た目も良く、快適にすごせるわね。
【M】それから防寒なんていうのもあるかな。冬の季節なんかは、コートを着たまま電車やバスに乗り込むと、人の熱気と暖房の暑さに汗ばんでしまうことって多いわよね。コート脱いだら邪魔だし。そこでスリーピースにすれば、コートのアリとナシの中間くらいの丁度いい防寒性能を得られるの。これにマフラーや手袋を合わせれば都心では真冬以外はコートいらないかもね。秋冬に売れる傾向があるなんていうのも、そういう理由からなのかもね。
【A】ビジネスシーンとフォーマルなシーンでのウェストコートのデザインの使い分けってあるのかしら?
【M】自分の好みで選んで全然いいのよ! 敢えて提案するならば、パーティの席なんかでは、ダブルの襟付きベストを着れば、ジャケットを脱いだ時に個性を発揮できるから楽しいかもしれない。でもゴッドファーザーIIに出てくるアル・パチーノみたいに、バシッと自信を持って着こなしてほしいわ~。あの迫力のあるカッコ良さったらもう……♡
【K】スリーピースを着こなすことで相手に信頼感を与え、上着を脱ぐ機会があってもワンランク上の身だしなみが維持できそう。仕事の幅も広がること間違いなしね! って、マリ姉―っ! 帰ってきて―っ!(笑)
【今回ご協力いただいた方】
英国のモノを大切にし、次世代に引き継ぐ文化など、日本と似た価値観に親近感を感じているという井上さん。個性的なのに、品の良さがあふれ出ている装いはまさに英国紳士そのもの。親しみやすい笑顔と優しい口調で語られる幅広い知識にスタッフ一同すっかり癒されてしまいました。
【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。
re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。
マリ(中央)
re*colabo代表。ファッション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。
クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファッション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。
アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。
photo:Ayako Nakamura
text:re*colabo