第二十三回「マフラーを侮ると勿体ない問題」
「冬ファッションの主役を選ぶつもりで吟味して」
【K】寒っ!
【M】ほんと? 風邪でも引いたんじゃない? アキも寒い?
【A】ううん。私、全然平気。テラス席やめて、中へ入る?
【K】ごめん、大丈夫よ。一瞬ブルっと来ただけ。日中、暑かったからさ、冷え症のくせに、ちょっと薄着で来ちゃった。
【A】この寒暖差、困るよね。あ、私、マフラー持ってるわ。
(アキ、クミの膝にマフラーを掛ける)
【K】あったか~い……。やばい、アキ。今、キュンとした……。アキが男なら、惚れてしまうシチュエーションよ。ドラマだったら恋物語が始まるはず。
【M】あははは、確かに! マフラーはそういう使い方もできるのね(笑)。それがコートやジャケットだと少し戸惑うけど、マフラーなら素直に借りられるわ。
【K】まさにそう! これさ、品質表示を見なくてもオールカシミアってわかる。軽くてふんわり、肌触りもいいし、もうポカポカしてきた。
【A】ふふふ。実はこれ、メンズのコーナーに置いてあったの。歩いていたら目に飛び込んで来て、素通りできなくらい惹かれちゃったのよ。オーセンティックな柄なんだけど、バーガンディにブルーのラインの組み合わせが新鮮でしょ?
【K】うんうん。男性の首に巻かれていても、目が離せなくなりそう(笑)
【M】こういうピリッと差し色になるセンスの良いマフラーを、大人の男性が取り入れていたら素敵ね。ネイビーやグレーのスーツに合わせたら、ものすごくモダンな雰囲気を作れると思うの。
【K】うわっ、それ一瞬で悩殺されるコーディネート。退屈なスーツスタイルが格段にお洒落になるわね。顔周りに近いアイテムなだけに若見えして華やかにもなるわ。
【M】そう、質とセンスの良いマフラー1本で、全体の印象を格上げしつつ若々しくてお洒落に変えてしまうんだもの、これからの季節、使わないと損なアイテムだと思う。
「もの足りなさを感じるシンプルなスーツも、すぐさまお洒落な雰囲気に」
【K】実は私、マフラー男子が大好き♥ 特に、首だけじゃなく顎を隠すようにぐるっと巻いているのを見ると、ガタイの良い男性でも「可愛い…」って萌えるんだけど、私だけ?
【A】わかる! あれ、反則よね(笑)。抱きしめたくなっちゃうのは、母性本能がくすぐられているのかしら?
【M】小顔効果でスタイルも良く見えるしね。あ、受験生みたいに、後ろで結ぶのはだめよね。
【A】それは、大人がやっちゃだめ(笑)。スーツならミラノ巻きかな。
【M】私は、結ばずに首にかけただけのスタイルも男らしくて好きよ。縦のラインが強調されるから、スタイルアップもできるわ。コートの内側からチラッと覗いている感じも、品があって好きかも♥
【K】それもいいね! 大人~。でも、私たちのこの妄想に登場しているマフラーって、質の良いカシミアが前提でしょ? 物によっては、ファッションのアクセントになるどころか、おじさん臭さを助長してしまうマフラーもあるよね。
【A】そうそう、毛玉や、くたびれ感のあるものは確実に逆効果ね……。柄物も数年前のものは危険。当時の流行柄だとしたら、古臭く感じるもの。
【M】その点、オーセンティックな柄物なら長く使えそうね。マフラーは脇役どころか主役にも成り得るアイテムだから、「冬の主役」を選ぶつもりで、上質なものを吟味してほしいな。
【M】控えめなコーディネートを好む男性には、無地と柄のダブルフェイスなんかもおすすめよ。無地をメインにして結べば、ちょっと表情が出る感じだから、抵抗なくお洒落が楽しめると思う。スーツと同系色の方が落ち着くという人なら、マフラーの色のトーンを少し上げるといいわ。
【A】あ、タイムリーにダブルフェイス登場……
【M】なあに?
(後ろを振り返る)
【A】今、おひとり様で来た男の人のマフラー、まさにダブルフェイスね。ダンディって、ああいう人のことをいうのよ。
【K】シックな色柄なんだけど、無造作な結び方をしているから表情豊かで、ダブルフェイスの良さが際立っている。小物で季節を先取りするあたり、ファッション関係者の匂いがぷんぷんするね。
【A】女性と待ち合わせかしら♥
【M】だとしたら、あれもひざ掛けになるのかもね(笑)
【今回ご協力いただいた方】
英国のモノを大切にし、次世代に引き継ぐ文化など、日本と似た価値観に親近感を感じているという井上さん。個性的なのに、品の良さがあふれ出ている装いはまさに英国紳士そのもの。親しみやすい笑顔と優しい口調で語られる幅広い知識にスタッフ一同すっかり癒されてしまいました。
【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。
re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。
マリ(中央)
re*colabo代表。ファッション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。
クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファッション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。
アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。
photograph:Ayako Nakamura
text:re*colabo