2015年頃から、スイスの時計産業は厳しい局面が続いている。スイス時計協会の統計によると、腕時計完成品の総輸出額は15年に3.6%減、16年に9.9%減。高級消費財であるスイス製腕時計は、市場の景況に大きく左右されるからだ。もう一つは腕時計自体への関心の低下である。街の至るところに、そして個人が持つスマートフォンなど各種デバイスに“時間”があふれる昨今、腕時計の役割は時刻を知るためのツールから趣味性の高い嗜好品へと変化(あるいは回帰)しつつあるからだ。
さて、そんな“逆風”下において、2017年の新作発表会に登場した腕時計を見渡すと、もはや耳目を驚かすためだけの開発は見当たらない。各ブランドの方向性は異なれども、一貫するのは"実のある開発”だ。本特集では、「メカニズム」「素材技術」 「品質・性能向上」「防水性能」「デザインワーク」という5つのカテゴリーに分けて、新しい時代のラグジュアリーの形を模索し、機械式時計の存在意義を押し上げるような各ブランドの注目モデルをセレクトする。
・均時差機構の追求にブレゲのDNAを見る――ブレゲ BREGUET
・複雑時計進化形はユーザーフレンドリー――ヴァシュロン・コンスタンタン VACHERON CONSTANTIN
・複雑時計を複雑につくるのはランゲにあらず――A.ランゲ&ゾーネ A.LANGE & SOHNE
・クロノ自社製造への道、最高難度の集大成――ブライトリング BREITLING
・コンテンポラリーを新素材で提案――オーデマ ピゲ AUDEMARS PIGUET
・新素材開発のフロントランナー――ウブロ HUBLOT
・重さ40g以下、最軽量クロノ――リシャール・ミル RICHARD MILLE
・航空・宇宙業界お墨付きの新素材――ロジェ・デュブイ ROGER DUBUIS
・世界最高水準を指し示すカリテ フルリエ認証――ショパール Chopard
・マスタークロノメーター全面展開――オメガ OMEGA
・最高品質とは何か?答えはここにある――ロレックス ROLEX
・誕生50周年の記念碑的モデル――ロレックス ROLEX
・光発電式、世界初の1000m防水――シチズン CITIZEN
・新生「ダ・ヴィンチ」と新CEOが目指すもの――アイ・ダブリュー・シー IWC
・アートな感性と共にある――シャネル CHANEL
・タンブールの新しい旅が始まった――ルイ・ヴィトン LOUIS VUITTON
※本記事は『PRESIDENT』2017年6.26号に掲載された記事をweb用に再編集したものです。
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